応援文化で地方を元気に 

SHOWROOM株式会社 

 代表取締役社長 前田裕二さん 

「応援文化が地方を元気にする」。夢を追うアイドルやアーティストと、応援したいファンをつなぐ仮想ライブ空間を運営するSHOWROOMの前田裕二社長はそう力を込めます。“推し活”ブームを仕掛けてきた前田さんに聞きました。

―SHOWROOMとは。
 路上ライブをするアーティストと観衆の関係をインターネット上にそのまま持ってきたサービスです。誰もが自由に発信できるし、見るのも自由。コメント投稿やギフティングの仕組みを通して、アーティストを応援することもできます。


―新聞とのタイアップについて。
 当社として新聞社との大きな協業は過去にもそこまで例がないと思います。新聞はアナ
ログでレガシーな少し古いメディアという見方をする向きもあるかもしれませんが、SHOWROOMは新聞やテレビなどの伝統あるマスメディアと相性が良く、シナジーを生
めることを確信しています。しかも地方の新聞というところも応援文化と相性が良い。実
際、テレビとの連動を振り返ってみても、キー局だけでなく地方局の皆さんとも一緒にイ
ベントを仕掛けることが多いです。
「SHOWROOMって新しいメディアなのになんで(既存メディアと)組むんですか?」ってよく聞かれますけど、マスメディアと協業するのは、SHOWROOMで活動するライバー(ライブ配信者)の皆さんが世代を超えて認知・承認されてほしいから。すべての人に対してオープンに、機会を提供するのがSHOWROOMですが、マスメディアは真逆ですよね。選ばれた人しか出演できないからこその権威性がある。ライバーの皆さんが「テレビに出たから」「新聞に載ったから」ご家族に活動を認めてもらえるというのは想像以上に大きく価値があることだと思っています。


 ―「四国活性化プロジェクト」について。
 最近の地域活性化には、2つの方向性があると感じています。一つはSNS映えする、「いわゆる「バズる」場をつくって注目を集めるやり方。もう一つは、四国が好きでたまらない人、四国を応援したい人の共感の輪を広げるようなやり方です。SHOWROOMが得意とするのは後者の、人を起点とした応援文化をつくることです。今回のプロジェクトからつい四国を応援したくなるような、四国を背負って立つような人材が育つことに期待しています。
 地方と応援文化は親和性が高いと思います。例えば高校野球。自分の出身県の高校が甲子園に出場しているとつい応援してしまいませんか。アイドルでいえば、本拠地が名古屋市のSKE48や瀬戸内エリアのSTU48は、メンバー個人を応援する「単推し」ではなく、グループとして応援する「箱推し」の文化がすごく強いです。ローカルの文脈があるだけで、応援の対象と同質化して自分事にできる力を持っているんですよね。


―応援をどう地域の元気に結びつける?
個人的に、コロナ禍において利他的な「応援消費」が広がりを見せたことが印象的でした。困っている生産者や飲食店を応援するためにお金を使う。自分自身に余裕がない人も
増える中で、利他的な消費が起きるというのはとても日本的で、ユニークだと感じました
。応援は、される側だけでなく、する側にも生きがいを与えてくれます。地域と、その土
地を応援したい人との関係性を丁寧に育んで、根付かせていくことが、これからの地方にとって非常に大切なことではないかと思います。


―SHOWROOMのメインユーザーは10~20代。前田さんから見てどんな世代?
 多様で、ひとくくりにしづらい世代ですね。あえて抽象化して共通項を探すとしたら、「キング(King、王様)の時代」から「ナイト(Knight、騎士)の時代」に、という表現をよくします。僕より上の世代の少年漫画の主人公は、特に理由はないけど「海賊王になる」とか、「天下一武道会で優勝する」などと言います。一番になりたいということに共感が寄っていた時代です。ところが、Z世代(1990年代後半〜2010年生まれ)以降に流行っているアニメに、そんなキング志向の主人公はあまり見かけません。「鬼滅の刃」の主人公も、家族を殺されて、妹を人間に戻さなきゃいけない。巻き込まれたコミュニティーや事件の中で、誰かに寄り添って、助けていくナイトですよね。そしてナイトのキャラってみんな共通して心が温かく、優しい。そんな人でいっぱいになったら、世界はもっと居心地の良いところになるかもしれない。だから僕は応援文化の一般化に期待しています。自分がある地域の代表として活躍したい、とか、自分が関わったコミュニティーに貢献したい、という若い世代の純粋な思いを、さらに外側から応援する誰かが現れ、応援と感謝と努力が交差する循環が生まれる。そのループが生み出すエネルギーが地域を大きく盛り上げていく。それが理想であり、今回のような座組みを通じて一つずつ丁寧に実現していきます。


―SHOWROOMのスタートから10年。今の思いは。
 「ライバー」の地位を高めたいという目標は変わらず強く持っています。「ユーチューバー」は市民権を得ましたが、ユーチューバーは上位1%が生き残る世界であり、生き残るためには、たくさんの人に受けるものを作らないといけない。つまり、幅の世界では、圧倒的に敗者の比率が高くなってしまう。
これに対して「ライバー」は深さの世界です。SHOWROOMは、たった一人でも応援し始めてくれたら何かが変わるかもしれない、前に進めるかもしれないという世界です。誰もが気軽に始められて、ファンをつくるまでの過程も、他のプラットフォームに比べてハードルが低いという自負があります。夢を諦めたくない、熱量はあるのにぶつけ先がないというエンターテインメント業界の構造をこれからも変え続けていきたいです。


まえだ・ゆうじ 1987年、東京都出身。早稲田大学卒業後、外資系投資会社を経て、2013
年にディー・エヌ・エー入社。ライブ配信サービスSHOWROOMを事業化し、15年の会社
分割に伴い現職。グローバルスターBTSを擁するHYBEや女子プロレス団体「スターダム」を傘下に持つブシロードなどと資本業務提携を結び、新たな視聴体験の創出に取り組んでいる。日本テレビ「スッキリ」の金曜コメンテーター。

主催:徳島新聞社、四国新聞社、高知新聞社、愛媛新聞社
協賛:大王製紙ほか後援:四国経済連合会、四国商工会議所連合会、四国ツーリズム創造機構